〜電車でGo! 2ハンドルマスコンPWMパワーパックの開発記録〜
2.動作解説編
Last Update 2009.11.06
本編を読み解くには、回路図を傍らに置いて文中の記号と照らし合わせると、理解が進み易いです。「電車でGo! 2ハンドルパワーパック」の解説
加減速ノッチの状態をオペアンプ・パワーMOS-FETを介してレールに出力し、車両の走行を制御する。
最大出力電位差は+12V、最大出力電流は0.5Aであり、電源投入時の暴走防止機能、線路ショートからの保護回路を備える。
計器パネルには出力電圧・出力電流・加減速度を表示するメータ、運転状態の表示ランプ4個(予備1個含む)が装備されており、持ち運びに備えて着脱が可能である。
本装置の電源として、外部にAC-DCアダプタが必要である。
1.動作概要
加減速ノッチの状態はオペアンプに対して電圧で通知され、通知の時間的変化・ノッチ操作の瞬間に於ける状態遷移は、各所に配された大容量電解コンデンサによる充放電回路で制御・補償される。
PWM信号を生成するオペアンプは、入力が車両停止時 2.0V、最高速度走行時 0.6Vとなっており、すなわち負論理(負極性)である。
そのため、加速ノッチはオペアンプ入力電圧を下げる方向に、減速ノッチは上げる方向に働くようになっている。
加減速ノッチの操作優先度は減速優先としたいので、減速ノッチ回路は加速より電源寄りに配して、加速ノッチは減速ノッチの支配下に入れることを考慮している。オペアンプ入力極性(負極性)はPWM評価ボードキットの仕様であり、改造が増えるのを防ぐために変更せず使っている。
2.各ボードの機能と動作
本パワーパックは、PWM評価ボードキットの回路をベースに、必要機能を追加拡張するかたちで作られた。
本来、PWM評価ボードキットの電源電圧は+6Vであるようだが、これは使用半導体の仕様から見て付属モータ由来の制約と考えている。
この前提をもとに、本装置の電源電圧はPWM評価ボードキットを含めDC+12Vとしている。(1)Brake Board
・回路構成
オペアンプ入力電圧を決める分圧抵抗であるRB01(33KΩ)の値はPWM評価ボードキットより流用しており、キットではモータ停止状態を得る値となっている。
故に、RB01に抵抗を直列に足して電圧降下の変化幅を大きくとり、電圧降下が最大(10V)でブレーキ解除、最小(約8V)で緊急停止となるよう設定している。
ブレーキ作用については、加速ノッチによる電圧低下(2.0V〜0.6V)を妨げる分圧抵抗を作り出すことで、ブレーキ表現を作り出している。・減速ノッチの段間における瞬間的な接続オープンについて
ノッチの機械構造上、レバー操作の瞬間に接続オープンが起きる。
このオープンは素早い操作では目立たないが、ゆっくりした操作ではユルメ操作に反して急減速したり、込め操作の最中に急加速する現象を引き起こす。
原因は、減速レバーが段の中間にあって接続オープンとなる瞬間、接続が生きている加速ノッチ回路がノッチ位置に応じた動作を行うからである。
(常に加速するとは限らない)対策としては数種類考えられる。
本装置では、接続オープンの際のCR01電解コンデンサの放電を利用して、減速ノッチ段間に生じる無電圧時間を少なくする方法を採っている。
この方法のメリットはレバー操作に対する反応が幾分緩慢になり、走行表現が穏やかになること、回路がシンプルなことである。
デメリットはCR01容量の決定が難しく、カットアンドトライになることである。CR01のチャージ電流・放電電圧は、加減速ノッチの位置、起動電圧ボリューム、及び、操作時点での加減速ノッチの経過時間により無限に変化するからである。他の方法として考えられるのは、BrakeBoardのRB01ノッチ側に掛かる電圧を監視して、Vcc電圧に達した際はノッチ遷移と認識して、加速ノッチの回路を最小時間でアースから浮かせてしまうことである。人間のレバー操作は早くても数百msであるが、アース切り離しにリレーを使うと接点のチャタリングが影響するので、小電力トランジスタで電子スイッチを構成するのが妥当である。
さらに費用とスペースが許せば、CR01電解コンデンサの充放電を検流計で監視し、充放電時間が短くなるよう運転操作の腕を磨く環境を用意することである。
(2)Notch Board
・回路構成
PWM評価ボードキットの速度コントロールは、オペアンプ入力電圧を決める並列抵抗、すなわちRR01(100KΩ)と速度可変ボリュームVR10KΩによるものであった。
抵抗値の選定を簡単にするためRR01(100KΩ)はそのまま残し、並列となるVR10KΩを起動電圧調整(VR01)・加速ノッチ(OFF?5)・ノッチ微調整(VRN01?06)に細分化した。・加速ノッチの段間における瞬間的な接続オープンについて
減速ノッチと同様に、機械構造上の理由からレバー操作の瞬間に接続オープンが起きる。
さらに減速ノッチと同様、操作次第で急減速・急加速する現象を引き起こす。なお、加速ノッチ回路が電位的にブレーキより下位にあるため、現象は減速がほとんどである。
具体的な現象としては、マニュアルミッションの自動車・バイクの加減速エンジンサウンドを車両のモーターに置き換えたと言って差し支えない。
この現象は加速ノッチを戻す際に顕著に現れる。(人によっては楽しいと感じるかもしれない)
原因は減速ノッチの場合と同様で、加速ノッチ操作中にブレーキ回路の効果が現れるためである。本装置では、接続オープンの際に生じるCP01電解コンデンサ(PWM Motor-Controller Kitに実装)の充放電を利用して、加速ノッチ段間に生じる無電圧時間を少なくする方法を採っている。
ただ、RR01(5kΩ半固定抵抗、Relay and CR-Bridge Boardに実装)でBrakeBoardとの間に電圧勾配を持たせており、この抵抗による電流制限でCP01の効果が弱くなっている可能性はあり、VRN01と合わせて調整することにより改善する余地がある。
(3)Relay and CR-Bridge Board
・概要
本ボードには、電解コンデンサ初期充電回路、オペアンプ入力インタフェース、各種リレーロジックが実装されている。A.電解コンデンサ初期充電回路
電解コンデンサ初期充電回路は、RR07,RR08,RR09,RGT,RGT-A,RGT-B により構成され、電源スイッチオンから車両を制御するまでの時間を使ってCR02,CR03を充電することを目的とする。本装置は安全装置として、電源スイッチオンから運転可能な状態になるまで車両を停止させておく仕組みを備えているが、実現のためには、PWM評価ボードキットの仕様からオペアンプ負入力に+2Vの電圧を与えておく必要がある。
しかしながら、車両走行表現のスロースタート・スローストップを実現するため、CR02,CR03の並列による大容量コンデンサ(合計1330uF)を用いており、オペアンプ負入力に入る信号電圧の変化を緩慢なものにしている。
このため、運転可能な状態(オペアンプ負入力を+2Vで安定)に置くためにはCR02,CR03を予め充電しておく必要があり、これを初期充電と呼ぶ。
また、初期充電中は車両が動かないよう、オペアンプ出力をブロックすることも必要となる。RR07,RR08,RR09の抵抗値は、コンデンサ充電に要する時間、+12Vから+2Vを得るための分圧抵抗値の2点で決めたものである。
なお、RR08,RR09と分かれているのは単に手持ち部品の都合である。充電に必要な時間は Capacitor Initialization Timer Board の半固定抵抗で設定されており、自己保持条件(後述)成立の度にNE555で計数し2SC2120のオープンコレクタで出力され、RGTリレーコイルを駆動する。
充電中はRGT-BがMakeされ、RR07,RR08,RR09で分圧した電圧がCR02,CR03に印可される。
NE555の計数値はマージンを見込んで約20秒に設定しており、計数が完了するとRGT-AがBreakしてLED03「運転可(Operation Ready Indicator)」が点灯する。充電中の車両走行防止については、計数中はRGT-AがMakeすることを利用し、PWM評価ボードキットのオペアンプ出力(正極性パルス)をアースしてFETの動作を阻害して実現している。
このオペアンプ出力は330Ω抵抗で消費され、オペアンプの出力そのもののショートではないので、素子破壊などは起こらない。
オペアンプ出力電流は最大200mA[電源電圧+12Vの場合]、当回路に於けるオペアンプ出力電流は12V/330Ω=0.036A=36mAとなり、規格範囲内での使用となっている。B.オペアンプ入力インタフェース
オペアンプ入力インタフェースは、CR01,CP01,RR01,RR03,RR04,RR05,VR02,CR02,CR03 のCRブリッジ回路、およびIndicator Panel Unitに実装される50uA検流計から構成される。
概要回路を以下に示す。
(図解参照)初期化された電解コンデンサCR02,CR03は、加減速ノッチが変動した際に電荷を出し入れする。
その際、出し入れの方向を決めるのがRR03,RR04(合計500Ω)による電圧勾配である。
加減速ノッチが動かない状態では、CR02,CR03はRR05,VR02(Neutral Charge Current Adjuster)によって電圧が維持されており、電流は殆ど流れない。RR05,VR02の分岐電流はノッチ指示電流に打ち勝って影響してはならず、かつCR02,CR03の充電機能は求められるので、抵抗値は電圧を維持しつつ電流を抑えるべく大きなものになっている。
加減速ノッチが操作されると、RR03,RR04にはRR05,VR02の分岐電流を遥に凌ぐ電流が流れ、CR02,CR03を充放電しオペアンプの入力電圧を制御する。
その電流の向きはブレーキ込め又はノッチ戻しならRBK-BからRGT-Bに、ノッチ進め又はブレーキ緩めならRGT-BからRNT-Bにとなり、検流計の針が振れる向きにより知ることができる。
(図解参照)Indicator Panel Unitの50uA検流計はコンデンサCR02,CR03の充放電電流を表示し、ノッチおよびブレーキの操作量と利き具合を知る目安として機能する。
検流計の接続位置は、RR07,RR08,RR09が供給する充電電流が計測レンジを越えることから、電圧勾配抵抗RR03,RR04とリレーRGT-Bのあいだとしている。なお、オペアンプの入力電流は±10nA(±0.01μA)と非常に微量で動作影響は実質的に無く、入力電圧によってのみ制御されると考えて差し支えない。
C.各種リレーロジック
本ボードのリレーロジックには数種類の機能がある。a)安全装置について。
本装置には安全装置として、電源スイッチオンの際に「ブレーキ解除及びノッチオフ」になっていることを検知する仕組みを持っている。
安全装置を構成する主なパーツは、2個のMicro-sw(Brake-OFF Detector,Notch-OFF-Detector),RNT,RBK,RNT-A,RBK-A,RPWR-A,RPWR-B,RPWRである。
動作としては、ブレーキ解除及びノッチオフの状態でPower-SWを押されると、RNT,RBKのリレーコイルに電流が流れRNT-A,RBK-AがMakeする。
その結果、RPWRのリレーコイルに電流が流れRPWR-AがMakeしてRPWRのリレーコイルに電流を流しつづける(自己保持回路)。
同時にRPWR-BもMakeされるので、本装置全体に電源電流が供給され、LED02「電源(Power-ON Indicator)」が点灯する。
一旦RPWR-AがMakeされるとRNT-A,RBK-Aは役目を終えるので、ブレーキ・ノッチ両レバーとも操作可能となる。もし、ブレーキ解除またはノッチオフのどちらかが成されていない状態でPower-SWを押されると、RNT,RBKのどちらか片方のリレーコイルに電流が流れず、RNT-AまたはRBK-AがMakeできなくなる。
するとRPWRのリレーコイルに電流が流れず自己保持回路も機能しないため、装置の電源が入らずLED02も点灯しない。この状態を解消し電源スイッチオンを有効にするには、ブレーキ解除及びノッチオフの操作が必須であることから、電源スイッチオンの瞬間に車両が走ることを防ぐ「暴走防止機能(安全装置)」を実現している。
b)レバーオフの際のリレーによる状態保持について。
RNT-Bはノッチレバー、RBK-Bはブレーキレバーにより制御され、両者を並列につなぐことで負論理AND回路を構成している。
ブレーキ・ノッチ両レバーともオフにされた場合、本装置は直前の状態を維持する。
すなわち、車両が走っておれば惰性走行と判断して僅かな減速を伴いつつレールに電流を供給し続け、ブレーキにより車両が停止していたのであれば停車状態を維持するものである。回路動作としては、ブレーキ・ノッチ両レバーともオフにされた際にRNT-B,RBK-BともMakeしてレバー信号を切り離し、オペアンプ入力を電解コンデンサCR02,CR03の配下に置くことで直前の状態を持続するものである。
惰性走行に於ける僅かな減速は、RR05,VR02からなる充電回路が電解コンデンサCR02,CR03を充電する際に生じる穏やかな電圧上昇で実現しており、検流計を見ながらVR02を操作することで運転中でも微調整が可能である。c)レバー状態のインジケータパネル表示について。
インジケータパネルには+12V電球によるレバー状態表示があり、安全装置関連のリレーコイルと並列に電球制御用リレーコイルを設けて表示要因を取っている。
これにより、各レバーがオフ以外の場合にそれぞれ対応する電球が点灯する。
両レバーともオフの場合、RNTLED-A,RBKLED-Aの直列で形成する正論理AND回路の接点がMakeされ、該当する電球が点灯する。
なお、この回路はレバーの位置を表示するのが目的なので、ノッチ・ブレーキの同時点灯は仕様として許容する。
(4)Capacitor Initialization Timer Board
・概要
一連の電源起動ロジックにより本回路が起動される。
本回路の目的は、RR07,RR08,RR09で分圧した電圧がCR02,CR03に印可される時間を計数することにある。
回路構成は各種アプリケーション解説資料からの流用なので、詳細は割愛する。時間計数は半固定抵抗RT05(100kΩ)で設定されており、大容量コンデンサの値を変更した場合などに備えて調整が可能である。
動作的には、VDDピンに電源が供給されるとRT05で設定した時間経過後にOUTピンがHighレベル(+12V)を出力し、トランジスタ2SC2120のベースーエミッタがONとなってリレーコイルRGTを駆動する。
NE555の計数値はマージンを見込んで約20秒に設定しており、計数が完了するとRGT-AがBreakしてLED03「運転可(Operation Ready Indicator)」が点灯する。
(5)PWM Motor-Controller kit
本ボードは市販キットの回路に対して、電源パイロットランプのLEDと、オペアンプ負入力につながる部品を撤去して使っている。・概要
オペアンプNJM2904はコンパレータ(入力電圧の比較器)として働き、電圧差分がプラスの場合にはハイレベル(電源と同じ電圧)、マイナスの場合はローレベル(アース電位)をそれぞれ出力する。
電圧差分が0.6V以下ならば、ICの仕様上、判定不可能(保証外)となる。・PWMとしての動作原理は、以下の通り。
オペアンプの比較結果をFETで極性反転して負入力にフィードバックし、フィードバック関数(オペアンプの応答時間+フィードバック時間)を比較結果に反映する仕組み(=自己発振回路)をベースに、オペアンプ正入力の電圧変化で自己発振の周波数を可変する仕組みをもっている。・回路構成としては、
オペアンプの 3ピン>2ピン の電圧関係は、3ピン(正入力)電圧が変動しても維持するように構成されている。具体的には、比較限度電位差 0.6Vを上回るようにLPFの値が決められている。
なお、オペアンプの増幅度は1ピン(比較出力)-R5-R4-2ピン(負入力)の帰還回路の働きで規定され、動作中に変化することはない。・電源投入時の動作
オペアンプの1ピン(比較出力)は3ピン(正入力)が +2.0V、2ピン(負入力)はR8,R7による分圧で +1.2Vになっており、従って1ピン(比較出力)は 0VでPWMパルス(正極性)は発生していない状態である。
FETに流れ始める電流の変化(過渡現象)によって生じる電圧変化を、R6,C7からなるLPF(LowPassFilter・微分回路)でパルス信号に加工し、D4による半波スイッチング(R8,R6が作る電圧にリップル成分を乗せる)を行って、オペアンプ負入力にフィードバックする。
このフィードバックパルス電圧は 0.6Vであり、3ピン>2ピンの関係を瞬間的に崩してオペアンプ出力を反転させることで、PWMパルス生成を実現している。・動作
ノッチ操作により3ピン(正入力)の電圧が下がり、3ピン(+1.2V)>2ピンの関係になると1ピン(比較出力)はハイレベルとなり、FETをオンする。
実際の電圧関係は、3ピン(+1.8V)>2ピン(+1.2V)でFETに正パルスが供給され始め(PWMパルス)、3ピン(+0.6V)>2ピン(+0V)のときFETに供給されるパルスはハイレベルに固定され、FETは常時オンとなりモーターは最高速度に達する。・出力増強に関して
FETに関しては使い方はリレー同様に考えてよく、ON抵抗1.2Ωが保証されているので、大出力化する際はFETを並列に接続して抵抗値を下げればよい。
ただし、出力系統の配線容量を見直すなど、FET以外の部分も合わせて強化する必要が有るかもしれない。Q1は元々あるFET、Q2,Q3は並列に追加したFET。
・消費電力と放熱
消費電力については、本装置では最大出力+12V/0.5Aであるところから 12V*0.5A=6Wとなる。
この数値になると、白熱球を例えると判るとおり相当な発熱が予想されることから、ヒートシンクを備えて対処している。
電解コンデンサCP01は、部品撤去に伴う空きパターンに実装したものである。
(6)Indicator Panel Unit
運転台には取り外し可能な計器パネルが備わっており、装置状態を知ることができる。
パネルを取り外した状態で運転する際は、パネル側コネクタに代わるショートコネクタを差し込むことが必須である。
電圧計に関しては、現状(2009.10.15現在)の回路では、FET出力パルスが負極性であるため、停止状態で +12Vを示すので、注意が必要である。各計器、表示については以下の通り。
・電圧計は、精度2.5級、フルスケール15Vの直流電圧計を採用しており、測定箇所はFETのドレイン(PWM、+12V波形)である。
・電流計は、精度2.5級、フルスケール0.5Aの直流電流計を採用しており、測定箇所はFETのドレインとヒューズのあいだである。
・検流計は、精度不明、フルスケール50μAの直流検流計を採用しており、測定箇所はRR03,RR04とRGT-Bの中間である。
・「加速」はノッチレバーが「切」以外の位置(つまりレールに給電中)にあることを示す。
・「惰行」はノッチレバーが「切」、かつブレーキレバーが「解除」にあることを示すが、本装置は出力監視機能が無く、運転状態を把握しないので注意が必要である。
・「減速」はブレーキレバーが「解除」以外の位置にあることを示す。
・「」は機能追加に備えた予備であり、電球は実装済みなので、タイマICを使ったEB装置などを組み込む際の警告灯などに活用できる。
(7)Protection
車両の脱線、不慮の線路ショートによる本装置を守るため、レール出力端に2種類の保護機能を設けている。・ヒューズ
運転台の微調整ボリューム脇にあり、透明なカバーで保護されており、目視し易く、交換しやすい位置に配置している。
容量は暫定的に1Aとしており、PWM波形の場合の実効値(Vrms)がヒューズの溶断値と合致するのか調べきれていないためである。・ポリスイッチ
運転台裏側にあり、規定の電流値を越えると抵抗が増して通電を阻止する機能を持つ。
容量は1.85Aであるが、その値に関しては入手性によるもので、最適かどうかはヒューズ同様に調査中である。
なお、マイナス側(PWM信号側)とプラス側(+12V)の両方に備わっている。
3.電源
本装置は電源としてACアダプタを必要とする。
自前でAC電源を採用しなかったのは、工作が大掛かりで安全対策も難易度が上がり、費用も掛かるからである。
近年、中古パソコン市場の活況により、ノートパソコンに使うACアダプタの中古が安く手に入るようになり、種類の豊富さ、安全面、費用対効果の観点で非常に優れている等の理由から、ACアダプタを採用したものである。
なお、パソコンの付属スピーカなどに付属することがあるような、安価な家電向けACアダプタには平滑回路を持たないものがあり、AC電源の交流成分(50/60Hz)を含んだものが散見されるが、本装置は直流電源を前提としており、使用に適さないので注意が必要である。
その意味からも、ノートパソコン用・外付けハードディスク用などのACアダプタを推奨するものである。(1)必要仕様
本装置で必要となるACアダプタの要求スペックは次のとおりであり、標準スペック〜最小要求スペックのあいだで適当なものを選んで使うことができる。A.標準スペック
最大電圧 +13V(オペアンプの制約による)、最大電流 2A(出力保護回路のポリスイッチ動作値による)、ただし電流計の制限から線路電流は最大0.5Aとなる。B.最小要求スペック
最大電圧 +6V(流用したPWM評価キットの電源電圧による)、最大電流 0.5A(リレー駆動と電球点灯の概算、車両消費は除く)。
4.操作方法
マスコンとブレーキ以外のスイッチ・ボリューム・LEDについて。
右から。(1)赤い押しボタンスイッチは「電源スイッチ」。
レール上にある動力車がこのスイッチで暴走しないよう安全装置が付いており、電源スイッチを押した際に「保安」が点灯しない場合は安全装置が働いたものである。
解除の方法は、ノッチレバーを「切」に、同時にブレーキレバーを「解除」にすることで成される。(2)銀色のトグルスイッチは車両の進行方向を決める。
中立にすると線路に電気が供給されないが、これは安全面としての装備ではなく、あくまで運転操作のためのスイッチであり、誤操作防止機能は無い。(3)装置状態表示LED
本装置に通電すると、安全装置が働かない限り、左から順に点灯する。「アダプタ」はACアダプタから給電がある限り点灯し続け、ACアダプタの生死監視を意味する。
「保安」は、電源スイッチを押した際にノッチレバーが「切」、およびブレーキレバーが「解除」位置にあれば点灯する。
「出力可」は、「保安」が点灯して約20秒後に点灯し、レールに給電され車両のコントロールが利くことを示す。
(4)「供給電圧」ボリューム
線路に供給する電圧の微調整をする。
車両メーカーにより走り出す電圧が微妙に異なる差異を吸収するためのもの。(5)「操作応答」ボリューム
ノッチレバー、およびブレーキレバー操作の応答速度を、好み・車両に合わせてを加減するためのもの。
牽引両数により異なる加速を再現する場合、また、惰行運転の自然な減速を調整する。
調整具合は右上にある検流計の振れ戻り具合を参考にすると良い。
5.既知の問題点
・ノッチを「切」から「1」にすると、検流計が大きくマイナスに振れる(減速を意味する)。
・ノッチ「1」での走りがスムーズではない。
・ノッチ「5」とブレーキ「非常」の組み合わせで、車両が走り続ける。
・電球の遮光が不完全で、見栄えが悪い。
・FETが負極性パルス出力なので、電圧計の針が+12Vから下がる方向に表示されてしまう。
・「供給電圧」ボリュームと「操作応答」ボリュームの位置によって、ノッチ「切」・ブレーキ解放にあっても勝手に車両が走り出して、加速してしまう。
・オペアンプの正入力電圧が判らないので、オペアンプに対する加減速指示が完全には掴めない。